道路工事のわきを
自動車で徐行していると
道路わきにある
泥のかたまりが
目にとまった
その泥は
白く乾いていて
長い時間その場所に
置かれているように思えたが
それは泥にまみれた
クマだった
「クマだ!クマがいるぞ!」
工事関係の人たちに
きこえるように
大声を出したが
彼らの耳に
私の声が届いたか
わからない
クマはゆっくりと
動きはじめ
私のあとを
ついてきた
固い泥を
身にまとっているためか
クマの動きは
ゆっくりしている
工事区間をすぎると
いつのまにか
自動車ではなく
歩くような速度しか
出せないバイクに
私は乗っていた
「このままでは
クマに追いつかれる」
そう思いながら
恐怖感はない
空は
よく晴れていて
日差しは
おだやか
交通量の少ない道路は
広くて
ゆるい下り坂
歩道には
散歩している人
そのむこうには
しっかり手入れされて
風通しのよさそうな
公園の樹木
目のまえに広がる
のどかな風景に
心地よさを感じながら
私は大きな声をだす
「クマだ!クマだ!」
そして
そのあとを
クマはついてくる