はたまん文庫

俺の庭

俺の庭には
山があり
川がながれている

川の水は
よどみなく
絶える気配はない

俺の庭には
シカやクマ
キツネや
タヌキがいる

だれかに
見てもらえる
あてがないのに
毎年
花を咲かせる
草木もある

俺の庭には
俺の知らないあいだに
家をたてて
住んでいる
人間がいる

俺が
やつらに
近づくと
やつらは
俺にむかって
大声をあげる

「かってに
うちの庭に入るな!」

「庭を見物するなら
金をはらえ!」

ある朝
俺は
俺の庭を
見まわるために
家を出た

あれから
長い時間がすぎ
歩いてきた道は
草のかげに
消えてしまったのに
俺は
まだすべてを
見終えることが
できないでいる

俺の庭が
どれくらい
でかいのか
俺は
わからない

(2012年6月14日)