はたまん文庫

ネズミの夜

「自分がやっている
省エネを書いて
おしえてくださーい」

先生がこどもたちの顔を
見ながらいいました

さいしょに
書きおわったのは
ウサギさんでした

「れいぞうこのとびらを
あけたり
しめたりしなくて
いいように
とびらを
あけたままにしておく」

つぎに
書きおわったのは
タヌキさんです

「つうがくじかんを
みじかくするために
がっこうのゆかしたに
ひっこしてきた」

つぎは
シカくんでした

「じぶんであせみずながして
やさいをつくるのをやめて
となりのいえのはたけから
やさいをくすねている」

そのとき
とつぜん
ウサギちゃんが
大きな声でいいました

「ネズミくんち
省エネしてないんだってー!」

ウサギちゃんは
みんなに印象づけるために
さらに三回さけびました

「ネズミくんち
省エネしてないんだってー!
ネズミくんち
省エネしてないんだってー!
ネズミくんち
省エネしてないんだってー!」

「みんな
がんばって
省エネしてるのに
ネズミくんちだけ
ずるーい!」

「ネズミくんが
省エネしないから
地球の環境は破壊されて
どうぶつは絶滅するんだ!」

「そうだそうだ
どうぶつが絶滅したら
ネズミくんちが原因だ!」

「みんな
しずかにー!」

先生が大きな声でいうと
教室はしずかになり
先生はネズミくんを
見ながらこういいました

「ネズミくんも
みんなのために
省エネがんばって
くださーい」

その夜
ネズミくんは
学校でいわれたことを
とうさんネズミに
つたえました
すると
とうさんネズミが
いいました

「でも
うちでは
電気もガスも灯油も
使っていないし
なにをすればいいのだ?」

とうさんネズミは
目のまえにある
ろうそくの火を
しばらく
見つめてから
いいましたた

「火を消してもいいよ」

ネズミくんは
ふーっとふいて
ろうそくの火を消しました

「省エネだね」

「ああ省エネだ」

「・・・・」

「暗くて
なにも見えないね」

「・・・・」

「たいくつだね」

「想像してごらん」

「なにを?」

「なんでも
好きなことを」

(2011年11月29日)