はたまん文庫

透明なまなざしをしていた

「屋根裏から
監視されている」

「すれちがう人が
みな自分のことを
笑っている」

彼らは
そう言うだけで
それが事実であることを
証明するものは
なにも持っていなかった

彼らに共通していたのは
病気であるという自覚があり
そのために与えられた
医療薬を服用していたこと

その薬が人間の意識にもたらす
負の側面について
意識していなかったことも
彼らに共通していたことだった

薬による影響を
自覚できない状態は
飲酒している者が
車のハンドルをにぎりながら
重大な事故を起こす可能性を
自覚できずにいることに
似ている

医者から与えられた薬で
良くなることがあっても
悪くなることがあるとは
想像すらしなかったのかもしれない

そんな彼らは
やがて私に姿を見せなくなることも
共通していた

(2014年11月5日)